【法人/個人事業主】お歳暮は経費になる?科目・仕訳・領収書・いくらまでをやさしく解説

【法人/個人事業主】お歳暮は経費になる?科目・仕訳・領収書・いくらまでをやさしく解説

WANTO編集部

お歳暮・お中元は、日頃の感謝を形にして贈る日本の習慣です。経営者や個人事業主なら、取引先へ贈る機会も少なくありません。

この記事では、お歳暮やお中元の経費処理の可否や、適切な勘定科目(交際費・広告宣伝費など)について、税理士法人 大沢会計の監修のもと、わかりやすく解説します。

※ なお、個別の事案について、詳しくはお近くの税理士にご相談ください。

お歳暮やお中元は経費になる

お歳暮やお中元を経費にすることは、法人でも個人事業主でも基本的には可能です。それぞれの考え方や注意すべきポイントを紹介します。

【法人の場合】業務関連性と贈答目的の明確にする

法人は「誰に・何を・なぜ贈るのか」を明確にします。相手が取引先・仕入先・代理店などの事業関係者で、関係維持や謝意表明といった業務目的に基づく場合は原則として経費にできます。

贈答履歴や金額の妥当性を台帳に残し、年度で過度な増加がないかをチェックしましょう。私的色が強い贈答や相手不明の場合はリスクになるので記録を残しておくことが大切です。

【個人事業主の場合】私的支出との線引きと必要経費の考え方

個人事業主は家計との混同が起きやすいため、相手が事業に関係するか・売上維持や取引関係の構築に寄与する目的かをまず確認しましょう。

家族・友人宛や私的なお歳暮・お中元は必要経費に該当しません。贈答先・品目・金額・目的・日付を帳簿や台帳に記録し、領収書・送り状・納品書と紐付けて記録を残してください。

お歳暮やお中元の勘定科目は何にすべき?

科目は「誰に配るか」「目的は何か」で決まります。 特定の取引先向けは交際費が基本となります。お歳暮は季節性の高い関係維持目的の贈答なので、まず交際費を検討しましょう。

1) 現金で支払った場合(その場で支払い完了)

日付 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
購入日 接待交際費 5,000 現金 5,500 お歳暮(A社向け)
購入日 仮払消費税等 500 消費税10%

2) 会社のクレジットカードで支払った場合(締め日・支払日が後日)

(a) 購入時(クレジット会社への未払金が発生)

日付 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
購入日 接待交際費 5,000 未払金 5,500 お歳暮(A社向け)カード決済
購入日 仮払消費税等 500 消費税10%

(b) カード代金の引落時

日付 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
引落日 未払金 5,500 普通預金 5,500 カード利用代金支払い

3) 従業員が立替(個人カード・現金)→後日精算する場合

(a) 購入時(会社は従業員へ未払金を計上)

日付 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
購入日 接待交際費 5,000 未払金 5,500 お歳暮(A社向け)従業員立替
購入日 仮払消費税等 500 消費税10%

(b) 従業員へ立替精算(払い戻し)

日付 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
精算日 未払金 5,500 現金/普通預金 5,500 立替金精算(○○さん)

部署ごとに重複贈答が起きないよう台帳を一元化して、相手・目的・金額の妥当性を説明できる状態にしておくことが大切です。また、定期的に社内の上限額と承認ルートを見直すと安心です。

物品代・送料・包装をどう計上する?

物品以外に送料や包装代がかかった場合、仕訳は「本体(贈答品)+付随費用(のし・包装・送料)」とセットで考えましょう。

のし紙・ラッピング・配送料など、贈答のために直接要した費用は交際費側に含めて問題ありません。 請求書に本体・送料の内訳があるなら保管し、送り状・納品書と紐付けます。社内の承認書類や見積もりも一式まとめておくと、後日の説明がスムーズです。

インボイス対応で通る領収書と但し書きの書き方

領収書は、誰に・何を贈ったかが伝わる但し書きと、インボイスの必須記載を満たすことがポイントになってきます。

領収書の但し書きに「品代」のみの記載では商品をどのような目的で購入したのかがはっきりとしないため、何を買ったかわかるように、必ず「お歳暮代」と記載してください。

記入する際のポイント

  1. 相手が誰か(取引先名などが特定できるか)
  2. 用途が何か(「お歳暮代として」など目的が書いてあるか)
  3. 数量・内容(品名、個数、セット内容などが分かるか)

インボイス対応で必須の記載

  • 発行事業者の登録番号
  • 取引日(発行日)
  • 取引内容(品名)
  • 税率ごとの金額(10%対象いくら、8%対象いくら など)
  • 消費税額(税率ごとにいくらか)

簡易レシートしかもらえない場合

  • 別紙で補う:明細書・注文書・見積書・送り状などで、相手・用途・数量/内容を補足
  • 検索できる形に:日付・金額・取引先で検索できるファイル名や台帳の管理にしておく

いくらまでOK?金額相場とNG例の目安

金額に対して法令で一律の上限はありませんが、常識的な範囲と記録を整理しておくことをおすすめします。

常識的な範囲が目安

主要取引先なら3,000〜5,000円、特別な取引先でも1万円程度を上限にする企業が多い傾向です。毎年同水準か、突出して高額になっていないかも合わせて確認し、異常な金額が出た場合は理由を記録しておきましょう。

高額・私的・取引実態なし等、経費にできない場合

家族・友人など私的な相手、相手不明の高額品、見返りを期待した過度な贈与は寄附金認定のリスクがあるので注意が必要です。また、現金・金券の乱用もトラブルになる可能性があります。

判断に迷ったら「相手は取引関係者か」「金額は慣行に照らして妥当か」「目的は業務か」をチェックしてください。

お歳暮・お中元を贈れないケース:公務員・準公務員・利害関係者

相手が公務員、独立法人、公的機関の職員等の場合、利害関係者からの贈与は倫理規程で禁止・制限されています。また、民間会社でも、贈答禁止などの規定を定める会社も増加傾向にあります。

ここでは、お歳暮やお中元の贈答を一覧で解説します。

お歳暮やお中元を贈るべきではないケース一覧

区分(NG先) 具体例 なぜNG/注意ポイント 贈らない場合の代替案
公務員・準公務員 省庁・自治体職員、独法・公的病院・国公立学校の職員 利害関係者からの贈与は原則禁止・厳格に制限。受領自体が規程違反になり得る 物品は贈らない。年末挨拶状などに切替
監督・許認可・検査部門 検査官、監査・検収担当、入札関連部署 職務の公正さを損なう恐れ。贈与は利益供与・贈収賄のリスクになり得る 贈らない。公式な連絡・報告書提出など公的手続に限定
相手企業の規程で禁止 「贈答一切不可」「上限◯◯円」等の社内ルールがある企業 受領側のコンプラ違反になる。返送・関係悪化の恐れ 規程を確認し、可否・上限・受領手続を事前合意。不可なら挨拶状・情報提供へ
反社会的勢力・関係者 反社・その周辺団体 取引自体が禁止対象 取引・贈答を行わない
個人住所宛の高額贈答 取引先社員の自宅宛て、個人名義で高額品 私的利益供与の疑義/社内規程違反になりやすい 原則、会社や部署宛て。贈る場合も少額・実務的な品に限定し事前承認
匿名・相手不明・関係不明 宛先が曖昧、関係性が確認できない相手 事業関連性を説明できず、経費性・コンプラ面でリスク 贈らない。関係性と目的が確認できてから判断

迷ったら必ず贈る前に先方のポリシーを確認してください。社内でも「贈ってはいけない先一覧」と上限表を整備し、毎年更新して周知するといいでしょう。

お歳暮を贈れない場合の代替案

法令や相手企業の規程で贈答ができない場合でも、気持ちを伝えることは可能です。

手書きの礼状や年末挨拶状で感謝を伝える

今年の取り組みや成果と来年の抱負などを添え、担当者名で送付します。会社・部署宛てに届く公式文面ならコンプライアンス面でも安心できます。

請求書などの送付時にメッセージを添える

請求書の備考や更新案内メールなどに季節のご挨拶と御礼を一言そえるのも良い手です。日常コミュニケーションの中で丁寧さを積み重ねることで、コンプライアンスにも配慮した良い贈り物になります。

お歳暮やお中元の準備はお早めに

お歳暮やお中元の経費の基本

お歳暮の経費の可否は、相手と目的で判断できます。要点を贈る前に確認して、お歳暮の手配をスマートに行いましょう。お歳暮を贈れない場合には、書面などで感謝の気持ちを伝えるだけでも、相手に好印象を与え、今後の関係にも繋がってくることでしょう。

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