お見舞いにのしはつける?病気・災害時の掛け紙と失礼にあたらないマナー解説
WANTO編集部病気や怪我で大切な人がつらい状況にあるとき、気持ちを込めてお見舞いを贈る場面は少なくありません。
一方で、「のしは必要なのか」「水引はどれを選べばよいのか」「表書きや名前はどう書くべきか」など、形式面で迷ってしまうことも多いものです。
本記事では、熨斗(のし飾り)は付けないという基本的な考え方を踏まえながら、掛け紙の選び方、水引・表書き・名前の書き方、さらに退院後のお返しのマナーまでを整理して解説します。
のし(熨斗)とは?お見舞いで避けたい理由
「のし(熨斗)」は、もともと慶事の贈り物に添えられてきた縁起物です。起源は、アワビを乾燥させた「のしアワビ」にあるとされ、祝意や感謝を表す意味合いを持っています。
そのため、病気や怪我で相手を気づかうお見舞いの場面では、熨斗(のし飾り)の付いた掛け紙は用いないのが一般的とされています。お見舞いでは、祝意を強く感じさせない配慮が重視されるため、熨斗なしの掛け紙を選ぶと安心です。
のしの基本的な種類や使い分けについて詳しく知りたい場合は、以下の記事も参考になります。
のし(熨斗)の基本マナー|意味・由来・種類・現代マナーまで詳しく紹介
「のし紙」と「掛け紙」の違い
のし紙とは、右上に熨斗(のし飾り)と水引が印刷された、慶事向けの掛け紙を指します。結婚祝いや出産祝いなど、お祝いの贈り物で使用されるのが一般的です。
一方、お見舞いでは祝意を連想させないよう、熨斗(のし飾り)のない掛け紙を用います。水引のみが付いたタイプや、簡易的な短冊タイプなどが選ばれることも多く見られます。
掛け紙選びに迷った場合は、「お見舞い用(熨斗なし)」と表記されたものを選ぶと、失礼にあたる心配もありません。
病気・怪我のお見舞いに適した掛け紙のマナー
ここでは、病気や怪我のお見舞いにおいて一般的とされている、水引の選び方、表書きや名前の書き方、内のし・外のしの使い分けについて、順を追って整理します。
水引の種類と意味

お見舞いの掛け紙には、紅白の結び切りの水引が用いられることが一般的です。
結び切りには「繰り返さない」という意味があり、病気や怪我が長引かず、回復に向かうことを願う気持ちを表すとされています。
水引の色は紅白を目安とし、金銀など祝い事の印象が強いものは避けるのが無難です。また、白黒や黄白は弔事向けとされるため、お見舞いには適していません。
【図解】のしの結び切りとは?蝶結びとの違い、結婚祝い・お見舞いでの使い方を解説
表書きの正しい書き方
お見舞いの表書きには、「御見舞」または「お見舞い」が広く用いられています。目上の方や改まった相手に贈る場合は、漢字表記の「御見舞」を選ぶと、より丁寧な印象になります。
書く位置は掛け紙の中央上部とし、濃すぎず薄すぎない読みやすい濃さで記入すれば問題ありません。
メッセージを添える場合は、相手の体調や気持ちに配慮し、重ね言葉や断定的な表現は避けるようにしましょう。
<一言メッセージ例>
- 「一日も早いご回復をお祈り申し上げます。」
- 「どうぞご無理なさらず、ご自愛ください。」
- (社内・会社名義)「社を代表して、心よりお見舞い申し上げます。」
名前の書き方と注意点
表書きの下には、贈り主の名前を記します。個人で贈る場合は、フルネームが基本です。
夫婦や家族で贈る場合は、夫婦連名とすると分かりやすく、受け取る側も確認しやすくなります。連名は2〜3名までが一般的で、人数が多い場合は代表者名の下に「他一同」と添える形がよく用いられます。
会社名義で贈る場合は、会社名を記し、必要に応じて役職名や代表者名を併記します。
のしの連名の書き方について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【早見表付き】正しいのし(熨斗)の連名は?書き方と正しい順番を解説!
内のし・外のしの違いと使い分け
内のしは、包装紙の内側に掛け紙を掛ける方法で、配送時や控えめに気持ちを伝えたい場合に用いられます。外のしは、包装紙の外側に掛け紙を掛ける方法で、手渡しの場面など、贈り物の目的を分かりやすく伝えたい場合に適しています。
お見舞いでは相手への配慮が重視されるため、特に理由がなければ内のしを選ぶケースが多く見られます。ただし、病院の受付などで渡す場合など、内容が分かる方が都合がよい場面では、外のしを選んでも差し支えありません。
退院後・自宅療養中に贈る場合のタイミングとマナー
退院後や自宅療養中にお見舞いを贈る場合は、退院直後を避け、1週間から1か月程度を目安にするのが一般的です。
表書きは「御見舞」を選んでおけば問題ありません。相手の回復状況が明確で、回復を願う気持ちを表したい場合には、「祈 御全快」などを用いることもあります。
掛け紙は熨斗(のし飾り)のないものを基本とし、相手にとって負担にならない形を意識しましょう。
【災害・火事・陣中見舞い】お見舞いのマナー
お見舞いのマナーは、贈る相手の状況や出来事の性質によって、考え方が異なる場合があります。
一般的な病気や怪我のお見舞いと、災害や火事などの非常時、また応援の意味を込めた陣中見舞いでは、掛け紙の扱いや表書き、水引の有無などに違いが見られます。
ここでは、病気見舞い以外の代表的なケースについて、基本的な考え方を整理します。
災害見舞い(地震・水害)の場合
災害見舞いでは、熨斗(のし飾り)は付けず、水引のない白無地の封筒や簡素な包み方が用いられることが一般的です。
表書きには「御見舞」「災害御見舞」「水害御見舞」などが使われます。
被災直後や生活再建の段階では、品物よりも現金のほうが役立つ場合もあります。相手の状況を考慮し、負担にならない方法を選ぶことが大切です。
火事見舞いの場合
火事見舞いも、基本的には熨斗なし・水引なしの白無地で包む形が一般的です。
表書きは状況に応じて、「火災御見舞」「類焼御見舞」「近火御見舞」などが用いられます。
陣中見舞い・応援メッセージを送る場合
陣中見舞いは、試合や選挙、業務などに取り組む相手を励ます目的で贈るもので、病気や災害のお見舞いとは性質が異なります。
この場合は、のし紙を用いるのが一般的で、水引には紅白の蝶結びが選ばれます。表書きは「陣中御見舞」や「御励まし」などが使われます。
状況に応じて、簡単な手書きのメッセージを添えると、気持ちが伝わりやすくなります。
お見舞いのお返し|快気祝い・快気内祝のマナー
お見舞いをいただいた場合、回復後にお礼の品を贈ることがあります。
必ずしも形式的なお返しが求められるわけではありませんが、感謝の気持ちや回復の報告を伝えたい場合には、快気祝い・快気内祝として品物を贈る形が一般的です。
この際は、「御礼」ではなく、状況に応じた表書きを選ぶことで、気持ちがより丁寧に伝わります。
【図解】快気祝いの熨斗(のし)の書き方は?水引・表書きの基本から状況別のマナーまで解説
法人・ビジネスで贈るお見舞い時のマナー
法人やビジネスの場面では、社員や取引先へのお見舞いも、組織としての配慮や姿勢が表れる行為の一つとされています。
個人で贈る場合と異なり、会社名義での贈答は、相手との関係性や社外からの受け取られ方にも影響するため、掛け紙の選び方や表書き、名義の記載方法などに、より注意が必要です。
ただし、対応方法は会社ごとの慣例や就業規則によって異なる場合も多いため、実際に手配する際は、事前に社内ルールを確認したうえで進めると安心です。
社員・取引先へのお見舞いの場合
社員や取引先へお見舞いを贈る場合、表書きは「御見舞」が一般的に用いられます。
掛け紙は、家庭向けのお見舞いと同様に、熨斗(のし飾り)のないタイプを選ぶのが無難です。水引は紅白の結び切りを目安とします。
名義については、会社として贈る場合には会社名、または部署名を記載し、必要に応じて役職名や代表者名を添えます。社員向けのお見舞いでは、人事部や総務部など、担当部署名義で手配されるケースも少なくありません。
いずれの場合も、最終的には社内規定や過去の対応例に従うことが、トラブルを避けるうえで重要です。
お見舞いマナーを正しく理解して、心のこもった贈り物を
お見舞いに関する「のし」や掛け紙のマナーは、贈る相手の状況やシーンによって細かく異なります。
特に「のし」は本来慶事用であり、病気や災害などの場面では避けるべき表現です。水引の種類や表書き、名前の書き方などにも意味が込められており、正しく使い分けることで、相手への思いやりや礼節が伝わります。
状況に応じたマナーを理解し、心のこもった贈り物を届けましょう。