【2025年版】のし(熨斗)の基本マナー|意味・由来・種類・現代マナーまで詳しく紹介
WANTO編集部結婚や出産のお祝い、お中元やお歳暮など、贈り物の機会に欠かせない「のし(熨斗)」。一方で、「なんとなく使っているが、実は意味を知らない」という方も多いのではないでしょうか。
本記事では、熨斗の意味や書き方、マナーまで解説します。
のし(熨斗)の意味・由来・役割
のしの起源や意味、役割について解説します。
のしの語源「熨斗鮑」とは?
のしは、「熨斗鮑(のしあわび)」と呼ばれるあわびの加工品を贈り物に添えたことに由来します。あわびは「長寿」や「繁栄」を象徴する縁起物とされ、古来より神事や祝いの場で供えられてきました。
のちに、実際のあわびの代わりとして、紙に包んだ「折熨斗(おりのし)」が生まれます。これが現在の熨斗紙の原型です。現代では、贈答品に印刷されたのしを添えることで、相手への敬意と感謝を形にする意味を込められるようになりました。
現代におけるのしの意味と役割
のしといえば、多くの場合「熨斗紙」を指します。
熨斗紙には、贈る人の思いや感謝の気持ちを伝え、贈り物に特別感を添える役割があります。特に結婚祝いやお中元などのフォーマルな場面では、熨斗紙をかけることで相手への敬意を示せるため、贈答の基本マナーとして大切にされているのが特徴です。
のし・水引・掛け紙の違い
のしは贈り物に添える縁起物で、熨斗紙の右上に印刷された小さな飾りが象徴です。中央にある紐状の飾りは「水引(みずひき)」と呼ばれ、色や結び方でお祝いの種類や気持ちを表します。
また、熨斗紙と似た「掛け紙」は、のしが印刷されていないものを指します。のしは慶事の象徴であるため、弔事では掛け紙を用いるのが一般的です。

のしの種類と使い分け
贈り物にかける熨斗紙には、水引の結び方・色・本数・かけ方などに違いがあります。ここでは代表的なのしの種類や使い分けについて解説します。
蝶結び・結び切り・あわじ結びなど結び方の意味

水引には主に次の3種類があります。
蝶結び
ほどいて何度でも結べる形。何度あっても良いお祝いに使います。
例:出産祝い・進学祝い・お中元・お歳暮・新築祝い など。
結び切り
固く結んでほどけない形。「一度きりであってほしい」お祝いに使います。例:結婚祝い・快気祝い・退院祝い など。
あわじ結び
結び切りの一種で、「末永いご縁」を願う結び方。
例:結婚祝い・長寿祝い などに最適です。
それぞれの違いを理解して、相手や場面にふさわしい贈り方をしましょう。
のしの結び切りについて詳しくは下記の記事もごらんください。
【図解】のしの結び切りとは?蝶結びとの違い、結婚祝い・お見舞いでの使い方を解説
「内のし」と「外のし」の違いと選び方
熨斗紙をかける方法には「内のし」と「外のし」があります。
内のしは、品物に熨斗紙をかけてから包装紙で包む方法です。配送時や控えめに贈りたい場合に選ばれます。包装の外からは見えないため、開けて初めて表書きや名前が確認できます。
一方、外のしは包装紙の上から熨斗紙をかける方法です。手渡しや職場で配るお礼品など、誰からの贈り物か一目でわかってほしい場面に適しています。
「紅白」「金銀」「黒白」など水引の色と本数の意味
水引の色・本数にも意味があります。
- 紅白5本:一般的なお祝い(出産・進学・季節の贈答など)
- 金銀10本:格式の高いお祝い(結婚・叙勲・長寿など)
- 黒白または銀白:弔事(葬儀・法要など)
関西では、黄白を使う地域もあります。
「束ね熨斗」や「短冊のし」など形式の種類と用途
のしには、「束ね熨斗」と「短冊のし」という形式があります。
束ね熨斗は、複数の熨斗鮑を束ねた形を表す、幸せや繁栄を象徴する縁起のよい模様です。祝儀袋や包装紙のデザインとしても使われ、お祝いの場を華やかにします。一方、短冊のしは小さな贈り物や手土産に使う略式の熨斗紙で、控えめに贈りたいときにも便利です。
のしをつける意味とマナー
のしは、贈る相手やシーンによって選び方やマナーが異なります。ここでは、熨斗を使う場面別のルールと注意点について解説します。
お祝い・お礼・内祝いなど、のしを使う主なシーン
のしは、主にお祝い事や感謝の気持ちを伝える贈り物に使われます。結婚・出産・入学・昇進・新築・長寿など人生の節目のお祝いにはもちろん、お中元やお歳暮など季節の挨拶にも用いられます。
お祝いをいただいた際のお返し(内祝い)や、お世話になった方への御礼の品に添えるのも一般的です。用途によって結び方を変え、一度きりの祝い事には結び切り、何度あってもよい喜びごとには蝶結びの熨斗紙を使いましょう。
のしを使ってはいけないケース
のしはお祝いの気持ちを表す縁起物のため、場面によっては使わない方がよい場合があります。代表的なのは、生ものや精肉・魚介類などを贈るときです。のしの起源である「熨斗鮑」と意味が重なることから、不自然とされます。
また、葬儀や法要などの弔事では、のしのない掛け紙を使うのが基本です。病気や災害のお見舞い、謝罪の品など、喜びごとでない贈り物にも熨斗は付けず、無地の掛け紙や短冊を添えるのが一般的です。

法事ののしについて詳しくは下記の記事をごらんください。
法事の熨斗(のし)のマナー・書き方とは?宗派・地域別の違いもまとめて解説
「のし上」「のし下」の書き方と名入れマナー
熨斗紙には、上段に贈る目的を書く「のし上」と、下段に贈り主の名前を書く「のし下」があります。のし上には「御結婚御祝」「御出産御祝」「御中元」「内祝」など、贈り物の目的を中央に記します。
のし下には贈り主の氏名を表書きよりやや小さく書き、個人ならフルネーム、夫婦なら右に夫・左に妻の順で記しましょう。正式な場面では毛筆や筆ペンを使いますが、最近は印刷のしも広く利用されています。
「のし対応可」「無地のし」など表記の意味
「のし対応可」や「無地のし」などの表記には、それぞれ意味があります。
「のし対応可」は、希望すれば熨斗紙を掛けてもらえるという意味で、種類や表書き、名入れを指定できる場合があります。一方「無地のし」は、表書きや名前を入れない簡素なのし紙のことです。控えめな贈り物や職場で配るお菓子など、形式ばらずに感謝を伝えたい場面でよく使われます。
のしの文化と現代的アレンジ
長い歴史を持つ熨斗の文化は、時代とともに少しずつ変化しています。ここでは、伝統文様に込められた意味や進化する熨斗文化について解説します。
「束ね熨斗」「宝尽くし」などの文様に込められた意味
日本の贈答品や着物の柄には、縁起の良い意味を持つ「吉祥文様(きっしょうもんよう)」が多く使われます。その代表が「束ね熨斗」と「宝尽くし」です。
束ね熨斗は、のしを束ねた形を表した柄で、「人とのつながり」や「多くの祝福」を象徴します。一方、宝尽くしは打ち出の小槌や巻物など宝物を集めた図柄で「福」や「富」を招くとされています。
どちらもお祝いの品や包装紙に使われ、華やかで縁起の良い印象を与えます。
「のし」を英語で言うと?海外ギフト文化との違い
のしは、贈り物に添えてお祝いの気持ちを表すための日本独自の文化です。一方で、海外には同じような習慣がないことから、英語では「Noshi」とそのまま表記されることが多いです。
「Noshi」以外の表記で説明する場合は、“a ceremonial ornament for gift-giving in Japan”(日本の贈答用の飾り)と伝えるとわかりやすいでしょう。もし海外の方へ贈る場合には、カードなどで意味を一言添えると親切な印象を与えます。
現代の「デザインのし」「リボン包装」「印刷のし」の広がり
近年は、伝統的な紅白の熨斗紙だけでなく、花柄や季節柄、北欧風などのデザインのしが広がりを見せています。フォーマルな場面に限らず、内祝い・プチギフトなどでも人気が高まっている傾向です。
オンラインショップでは、表書きや名前を自動印刷できる「印刷のし」も一般的になりました。また、洋菓子店などではリボン包装やタグ風デザインと組み合わせた和洋折衷スタイルも増えています。用途や相手に合わせて、形式とデザインを使い分けましょう。
のしとは気持ちを形にする日本の贈り物文化
のしは、贈る人の想いを形に表す日本ならではの文化です。かつては、長寿や繁栄を願って熨斗鮑を添えていましたが、時代とともにその形は紙ののしや水引へと姿を変え、今もその心は受け継がれています。
贈る相手を思い、場面に合わせて正しい形式を選ぶことは、敬意と気遣いを伝えるマナーです。慶事やお礼、季節の挨拶など、贈り物をするときは、ぜひのしを添えてみてください。