束ね熨斗(たばねのし)とは?意味・由来・使われるシーンをわかりやすく解説
WANTO編集部贈り物のパッケージや和風のデザインで目にすることがある「束ね熨斗(たばねのし)」。色とりどりの帯状の文様が束ねられた、華やかで縁起の良いデザインです。
では、「束ね熨斗」とは具体的にどのような意味を持つのでしょうか?そして、なぜ縁起が良いとされているのでしょうか?
この記事では、束ね熨斗の定義や由来、そこに込められた4つの意味について、丁寧に解説していきます。
束ね熨斗(たばねのし)とは?
束ね熨斗とは、複数の熨斗を束ねた形を表現したデザインのことです。「束熨斗(つかねのし)」とも呼ばれ、通常の熨斗よりも華やかで大胆な構図が特徴です。
細い帯状のものを数本まとめて中央で束ね、その形を文様化したもので、各帯の中に花や幾何学模様などの装飾的な文様が入ることもあります。色とりどりの熨斗が重なり合う様子は、非常に華やかで祝福の雰囲気を演出します。
束ね熨斗は、祝儀袋として実用的に使われる熨斗というよりも、江戸期以降の工芸品や意匠集などに見られる「吉祥文様」として発展してきたデザインです。

そもそも熨斗(のし)とは?
もともと熨斗とは、アワビを薄く剥いで伸ばし乾燥させた熨斗鮑(のしあわび)のことを指します。「伸す(のす)」という言葉が語源となっており、贈り物に添える縁起物として古くから使われてきました。
アワビは古来より長寿・繁栄・延命の象徴とされ、伸すという行為が「吉事が長く続く」「家運が延びる」という意味に結びつきました。このような背景から、熨斗は慶事の贈り物に欠かせない存在となったのです。
現代では、本物の熨斗鮑ではなく、紙を折った「折り熨斗」や印刷された「のし紙」として簡略化されていますが、その縁起の良い意味は今も受け継がれています。
熨斗について詳しくは以下をごらんください。
のし(熨斗)の基本マナー|意味・由来・種類・現代マナーまで詳しく紹介
束ね熨斗が使われる主なシーン
束ね熨斗は、祝儀袋として実際に用いられるというよりも、装飾的な吉祥文様としてさまざまな場面で使われています。
ここでは、代表的な使用シーンを紹介します。
贈答品やギフトのパッケージデザイン
束ね熨斗は、贈答用のお菓子や食品、記念品などのパッケージデザインによく用いられます。
紅白や金色を基調とした束ね熨斗の文様は、祝いの気持ちを視覚的に伝えやすく、入学祝いや長寿祝い、季節の贈り物など、幅広い慶事に対応できるのが特徴です。
実際の祝儀袋ほど形式張らず、しかし縁起の良さはしっかり表現したい場面で重宝されています。
和菓子・和雑貨などの意匠
和菓子の掛け紙や箱、風呂敷、手ぬぐい、和文具など、和のテイストを活かした商品デザインにも束ね熨斗は多く使われています。
伝統的な意味を持つ文様でありながら、抽象化されたデザインのため、現代的なアレンジとも相性が良く、格式と親しみやすさを両立できる点が特徴です。
着物・帯・工芸品の文様
束ね熨斗は、着物や帯、漆器、陶磁器などの伝統工芸の文様としても用いられてきました。
特に、礼装用の着物や晴れの日に使われる工芸品では、「祝福」「繁栄」「人との縁」を象徴する文様として扱われます。
繰り返し用いられることで、家の繁栄や幸せが続くことを願う意味合いも込められています。
現代デザインへの取り入れ
近年では、束ね熨斗のモチーフを現代的にアレンジし、ロゴデザインやカード、Webデザイン、広告ビジュアルなど、伝統文様を現代的に再解釈するデザインの中で用いられる例も見られます。
伝統文様でありながら、意味がポジティブで抽象度が高いため、「お祝い」「感謝」「つながり」を表現したい場面で、ジャンルを問わず活用されています。
束ね熨斗が持つ4つの意味
束ね熨斗の意味については、特定の文献で定義されているものではありませんが、日本の吉祥文様や熨斗の歴史的背景、造形の特徴などから、次のような意味が込められていると一般的に解釈されています。
1. 多くの人々からの祝福
束ね熨斗は、複数の熨斗が束ねられていることから、「多くの人々からの祝福を受けている」という意味を持ちます。一本の熨斗ではなく、たくさんの熨斗が集まることで、より豊かな祝福の気持ちを表現しています。
2. 人と人とのつながり・絆
束ねられた熨斗は、「人と人とのつながり」や「絆」を象徴しています。贈る人と受け取る人、そしてその周囲の人々との結びつきを表す、温かい意味を持つ文様です。
3. 長寿の象徴
熨斗鮑がもともと長寿を象徴する縁起物であったことから、束ね熨斗も「長く健やかに生きる」という願いが込められています。長く伸びた熨斗の形状が、長寿への祈りを表しているとされています。
4. 幸せの分かち合い
束ね熨斗には、「幸せを周囲の人々と分かち合いたい」という意味も込められています。一人だけでなく、多くの人と喜びを共有するという、温かい気持ちを表現した文様です。
束ね熨斗は日本文化の象徴的な文様
束ね熨斗は、実用的な贈答作法というよりも、日本人が祝いや縁をどのように視覚化してきたかを示す、象徴的な文様の一つといえるでしょう。
贈り物の場面や日常の中で束ね熨斗のデザインを見かけたときには、その背景にある深い意味や歴史を思い浮かべれば、より一層、そこに込められた気持ちを感じられるはずです。