お供え物にのしは必要?正しいマナーと掛け紙・表書きガイド
WANTO編集部お供え物を用意する際、「のしは必要なのか」「どの紙を選べばよいのか」と迷ってしまう方は少なくありません。弔事はお祝い事とは異なり、包み方にも特有のマナーがあります。
本来のし紙はお祝いごとのための掛け紙であり、弔事では右上に熨斗が入った紙は用いません。その代わりに、落ち着いたデザインの掛け紙に弔事用の水引と表書きを合わせて用意します。
本記事では、お供えにのし紙を使わない理由を押さえたうえで、表書きの選び方や宗派・地域による違い、シーン別の判断ポイントまでを整理して解説します。
お供え物は「故人への敬意」を形にして届けるもの
お供え物とは、故人を偲ぶ気持ちと、ご遺族への思いやりを形にした贈り物です。
四十九日や年忌法要といった弔事の場では、品物の内容だけでなく、包み方や見た目も含めて整えることが大切です。掛け紙や水引、表書きが適切であるかどうかは、相手に与える印象にも直結します。
「表書き」「水引」「包み方」の三点の違いを確認し、お供えにふさわしい装いを意識することが、失礼を避ける第一歩になります。
「のし紙」と「かけ紙」の違い
のし紙とは、右上に熨斗(のし)と水引が印刷された、慶事専用の掛け紙です。結婚祝いや出産祝い、内祝いなど、喜びごとを分かち合う場面で使用されます。そのため、弔事であるお供えには用いません。
一方、掛け紙とは贈り物に掛ける紙全般を指す総称です。弔事では、熨斗のない仏事用の掛け紙を選び、弔事用の水引と用途に合った表書きを添えるのが基本となります。
店頭やECサイトでは、「仏事用」「弔事用」と明記された掛け紙を選ぶと安心です。
- のし紙:慶事用(熨斗あり)
- お供え:仏事用の掛け紙(熨斗なし)
のしの基本について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
のし(熨斗)の基本マナー|意味・由来・種類・現代マナーまで詳しく紹介
お供えののしの書き方
お供えに掛ける紙の表書きは、「いつ渡すか」「相手の宗派や地域」「何を贈るか」によって使い分けられます。
すべてを覚える必要はありませんが、「時期・宗派・用途」の順に整理して考えることで、判断しやすくなります。
時期による表書きの考え方

仏式の場合、表書きは渡す時期によって使い分けられるのが一般的です。
通夜や葬儀の段階では、「御霊前」が広く用いられます。四十九日を過ぎたあとの法要では、「御仏前」へ切り替えるのが基本的な考え方です。
一方、お菓子や果物、線香などのお供え物(供物)については、時期を問わず「御供(御供物)」と記すことで、用途が伝わりやすくなります。宗派が分からない場合にも選ばれることの多い表書きです。
初盆(新盆)については、案内状などで指定がある場合は、それに従うのが望ましいでしょう。指定がない場合は、品物であれば「御供」、金銭の場合は地域の慣習に合わせた表書きを選ぶと安心です。
なお、印刷された掛け紙や水引、印字された表書きを使用しても、失礼にあたることはありません。ただし、改まった法要や高額の供物を贈る場合などでは、手書きの表書きや本式の水引を選ぶことで、より丁寧な印象になることもあります。
宗派・地域による書き分けの一例(浄土真宗)
宗派によっては、表書きの考え方が異なる場合があります。その代表例が浄土真宗です。
浄土真宗では「御霊前」という表書きを用いないとされており、通夜や葬儀の段階から「御仏前」や、「御香資」「御香儀」などが使われることがあります。
また、地域によっては表書きの言い回しや水引の色に違いが見られる場合もあります。案内状や式場、寺院からの指定がある場合は、そちらを優先するとよいでしょう。
名前の書き方・連名・団体で贈る場合の注意
個人で贈る場合は、表書きの下中央にフルネームを記すのが一般的です。文字の大きさは、表書きよりやや控えめに整えます。
夫婦連名の場合は、右側に夫の名前、左側に妻の名前を記す形がよく用いられます。 三名以上の連名では、代表者名を中央に書き、左下に「外一同」と添える方法が一般的です。
会社や団体として贈る場合は、団体名のみ、または団体名と代表者名を併記するなど、状況に応じて記載します。
中袋がある場合には、住所・氏名・金額を記しておくと、受け取る側にとって分かりやすくなります。
のしの連名の書き方について詳しくは以下の記事をご覧ください。
【早見表付き】正しいのし(熨斗)の連名は?書き方と正しい順番を解説!
【お供えの場面別】掛け紙の使い分け
お供えと一口にいっても、葬儀の場で直接手渡す場合と、後日あらためて自宅へ送る場合とでは、掛け紙の扱いや表書きの考え方がやや異なります。
また、内のし・外のしの選び方や、名入れの濃淡なども、場面に応じて調整されるのが一般的です。
ここでは、代表的な場面ごとに、基本的な考え方を整理していきます。
葬儀・告別式の場合
葬儀会場へ持参する香典(現金)や供物(品物)には、熨斗のない弔事用の掛け紙と、水引を合わせます。仏式では、通夜や葬儀の段階では「御霊前」を表書きとするケースが多く見られます。
名入れは薄墨で記すのが一般的です。文字の美しさよりも、相手にとって読み取りやすいことを意識するとよいでしょう。
手渡す際は、表書きが相手から正面に読める向きに整え、両手で差し出すと、落ち着いた所作になります。
法要・四十九日・一周忌などの供物
四十九日を過ぎた法要では、表書きを「御仏前」に切り替えるのが基本的な考え方です。 品物のお供えであれば、「御供」と記す形でも、用途は十分に伝わります。
掛け紙は熨斗のない仏事用のものに、結び切りの水引を合わせ、名入れはフルネームで統一するのが一般的です。
外装や手提げ袋も、派手さを避けた落ち着いた色味のものを選ぶと、全体の印象が整います。
お盆・お彼岸・命日のお供え
相手の宗派が分からない場合には、品物の表書きを「御供」とし、熨斗のない仏事用の掛け紙に結び切りの水引を合わせる方法が、広く用いられています。
この形であれば、地域や宗派を問わず、過不足なく気持ちを伝えやすくなります。
配送で届ける場合は、控えめな印象になるよう内のしを選ぶのが一般的です。あわせて、輸送中の破損や汚れを防ぐ梱包にも配慮すると安心でしょう。
【関東・関西の違い】弔事に用いる水引の結び方と色の基本
水引の色については、地域による違いも見られます。
関東では黒白(または双銀)が主流とされる一方、関西では黄白が一般的とされる場合があります。同じ日本国内でも慣習に差があるため、案内状や式場、寺院からの指示がある場合は、それに従うのが無難です。
水引の結び方は、ほどけにくく「繰り返さない」意味を持つ結び切り、またはあわじ結びが基本とされています。
結び切りについてはこちらの記事をご覧ください。
【図解】のしの結び切りとは?蝶結びとの違い、結婚祝い・お見舞いでの使い方を解説
お供えにおける内のし・外のしの考え方
内のしと外のしは、掛け紙を外から見せるか、包装の内側に収めるかという違いがあります。
どちらが正解というものではなく、渡し方や状況に応じて選ばれているのが実情です。
弔事では、気持ちを強く主張しない「控えめな所作」が重視されるため、持参か配送か、相手との関係性などを踏まえて、適した方法を選ぶとよいでしょう。
持参する場合の包装・渡し方のポイント
香典や供物はむき出しにせず、袱紗や落ち着いた紙袋で持参しましょう。受付や玄関先では、先方から表書きが正面に読める向きに整え、静かに両手で差し出します。
お供えは「のし紙」ではなく仏事用の掛け紙を用いる
弔事のお供えでは、慶事用ののし紙(熨斗あり)は用いず、熨斗のない仏事用の掛け紙を選ぶのが基本です。掛け紙には、弔事用の水引と、時期や用途に合った表書きを合わせます。
表書きは、通夜・葬儀では御霊前、四十九日以降の法要では御仏前が一つの目安とされます。お菓子や果物、線香などの供物については、時期を問わず使いやすい御供(御供物)を選ぶと、宗派が分からない場合でも対応しやすくなります。
水引は結び切り(またはあわじ結び)を基本とし、色は地域によって黒白や黄白が用いられます。持参か配送かによって内のし・外のしを使い分け、弔事では全体として控えめな印象になるよう整えることが大切です。